2009年05月28日

素直復刊第1号『お婆さんと牛の尻尾の話』

昭和24年に留女書店から発行された、素直復刊1号
に太田静子さんの「お婆さんと牛の尻尾の話」が
掲載されています。表紙と、目次2枚と、この作品の
最初のページ、あわせて4枚の写真をアップしました。

「素直」の表紙
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目次
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作品の最初のページ
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編纂同人には尾崎一雄や井伏鱒二など6名が参加。
収録作品は川端康成、中野重治、田中英光、田宮虎彦
などの顔ぶれです。

「お婆さんと牛の尻尾の話」は全部で38ページ。
内容は、上等の毛布が無くなって、誰が犯人なのかが
気になってしかたない主人公の話です。読んでいる
うちに脱力するような、浮世離れした雰囲気の小説
です。挿絵も可愛いですね。

素直の最後のページには「近刊 あわれわが歌」と
記載されていて、近々、発売される予定の広告が
「放浪記第3部」などと並んで書いてあります。

定価は150円ですが、現在3500円〜6000円
で中古本として流通しているようです。





posted by ピアノ at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | その他、引用書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月24日

「太宰治情死考」 坂口安吾

妻の津島美知子さん(昔、都留高等女学校で教師をされていた)のことを記述しているのか、太田静子さんのことを書いているのか、定かでは無いですが、面白い記述なので備忘録しておきます。おそらく、奥様をおもんばかって書いたものと思われますが、小説家ならではの表現だと思います。

『とるに足る女なら、太宰は、その女を書くために、尚、生きる筈であり、小説が書けなくなったとは云わなかった筈である。』

青空文庫「太宰治情死考」 坂口安吾
http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/43137_30135.html


坂口安吾が「とるに足る女」で無い・・・と言っているのは、山崎さんのことと思われます。

太宰の肉体は、かなり衰弱していたようなので、差し引いて考えなければならないが、前日に電車に乗って、ひとりで出かけているくらいなので、座ったり寝たりしながら小説を書くことは、まだまだ可能だったと私は思っている。

ところで、奥様の名前をYahooやGoogleで画像検索しても、ほとんど見つかりません。長篠康一郎さんの著作である「太宰治文学アルバム」には女学校時代からの写真がたくさん掲載されています。笑ってらっしゃる写真が無かったように思います。奥さんをモデルにした作品はたくさんあります。当時、女学校の先生は恐ろしく厳しいというのが相場ですので、−夫婦間ではそれほどでも無いのかも知れませんが−娘さんには厳しく接していたのでは無いでしょうか。
ラベル:坂口 安吾
posted by ピアノ at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 太宰治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月07日

晩年の太田静子さんの優しさ

きっと、治子さんのことばかり考えていたのだと思い
ます。ピュアな愛情表現ができるような、美しい歳の
取り方をされていますね。

69歳というと、早世のようなイメージを持たれる
人が多いですが、太田静子さんは、十分に人生を
まっとうされたように感じます。

こういうエピソードは、残された者には心に刺さり
ます。治子さんの文章表現もシンプルでいて、
深い味わいがあり、涙が出そうになります。


『母の万年筆』より


病院での母からは、家にいた頃の頑固なおばあさんの面影がすっかり消えていた。ひたすらおとなしい、気弱なおばあさんとなっていた。
或る夏の夕暮れ、病室に入っていくと、母は嬉しそうに瞳を輝かせて、机の上のアルマイトの弁当編のフタをあけた。そこには、小さなスイカの切れ端が入っていた。お向かいのベッドのおばあさんからのお裾わけだという。

「さあ、食べなさい」

といわれて、思わず胸が詰まった。入院前には、大きいスイカの半分位、ひとりでペロリと平らげてしまう母だった。それが、アルマイトの弁当箱にすっぽりと入ってしまう程の小さいスイカを、見舞いにくる私の為に大切に残しておいてくれたのである。
今年の夏は、 ついに家では一度もスイカを食べられなかった。スイカの入ったアルマイトの弁当箱を、嬉しそうに開いた母の顔が、スイカを買おうとすると、どうしても浮かんでくるのだった。
まもなく、母の一周忌がやってくる。十一月二十四日の命日には、固い柿をひとつ、写真の前に供えたいと思っている。

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2009年05月06日

苦労されていた頃のエピソード

『心映えの記』より

寮母になる前、母は十一年間、倉庫会社の食堂の炊事婦をしていた。その食堂に、ある日、立派な着物を着た女性が入ってきた。母はその顔に、ばんやりと見覚えがあった。母より少し年下の彼女は、小さな女の子の頃、まんもるさまに診察されたことがあった。その昔の女の子が、まんもるさまの娘の母を突然訪ねてきたのだった。
茶碗洗いの手を休めて白いエプロン姿のまま食堂の裏口にでてきた母をみて、その女性はしばらく声もなかったという。ほとんどまとまった言葉もいわずに、とぶようにして帰ったというのだった。
「あれからしばらく、愛知川では、静子さんが炊事婦してなさるのは本当やった。ウソやなかった、という話で持ちきりどした」寮母時代の母に会いにきた愛知川小学校時代の母の同級生がいった。それまでは、娘時代の母を知っているだれもが、母がそのような仕事についているとは信じていなかった。ミニ・スカートをひるがえして愛知川の畦道を自転車で突っ走るモダン・ガールである一方、静子さんにはどこか箸を持ち上げるのも危うそうな、か弱い姫君の感じがあったからだと、寮母の母を前にしてその友だちはいうのだった。

posted by ピアノ at 23:12| Comment(0) | 太田静子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

太田静子さんの「詩」

太田静子さんが、素晴らしく生き抜いたことを
証明できる「詩」だと思います。

『母の万年筆』より

新米をおいしいと思ったことも、ここ数年なかったように思う。ところが、思いもかけず、昨年の新米は実においしかった。 一粒一粒を、大切にかみしめて食べたいという気持が、自然に起こるおいしさなのである。年が明けてからも、私は、新米を、小さいソースパンで、二合ずつたいては、ひとりでせっせと食べている。食べながらふと、この新米を、昨年の十一月末、あの世にいった母も食べているのだと思うと、急に胸がつまってくる。
肝臓ガンの疑いで、内科に入院していた母は、外科に移される直前に、外泊許可がでて、家に帰ってきた。その晩、この新米を、やはリソースパンでたいたのだった。

「おいしい、おいしい」

と、母はいった。二、三日前から、ひとりでさしたる感動もなく食べていた新米だったが、その母の言葉で、本当においしいと気がついた。新米と一緒に食卓にだした焼きたてのランプ・ステーキも、われながらびっくりするほどおいしく焼けた。それが、母との最後の晩餐となった。

手術をひかえて
おわかれに 家にかえった
内科さいごの 週末だった
きようのよるの
思いがけない ごちそう
今年のお米
ビーフステーキ
あわび
いか
手づくりの あたたかい
心づくしのごちそう
ありがとう
ありがとう
一生のうちで
一ばん おいしい
ごちそうだった
わすれない


母が、メモ帳に書きのこした詩である。これをよむたびに、涙がでてくる。母はあの時、これがふたりだけの最後の晩餐になると、思っていたのだった。それに私は気がつかなかった。ただ、母がおいしい、おいしいと、食べてくれるのがうれしかつた。

posted by ピアノ at 23:07| Comment(0) | 太田静子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

母の万年筆

最晩年の太田静子さんの優しさが心に凍みる。

229ページ
出版社: 朝日新聞社出版局 (1984/09)
ISBN-10: 4022552476
ISBN-13: 978-4022552471
発売日: 1984/09

母の万年筆
posted by ピアノ at 22:55| Comment(0) | その他、引用書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

空からの花束

太田治子さんの娘さんとの楽しいやりとりなど、
エッセイとして面白く読める。太田静子さんの
情報は比較的少ないが、人格者として誰もが
敬愛する司馬遼太郎さんと、その奥様が、ひとり
になった治子さんを支えていたことが印象的。


単行本: 246ページ
出版社: 中央公論社 (1996/07)
ISBN-10: 4120025918
ISBN-13: 978-4120025914
発売日: 1996/07

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posted by ピアノ at 22:49| Comment(0) | その他、引用書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

心映えの記

太田静子さんが亡くなった前後の出来事を中心と
したエッセイ。定年で仕事を終えた、最晩年の
太田静子さんの、まっすぐな生き方が伝わって
くる。


文庫: 288ページ
出版社: 中央公論新社; 改版版 (2005/8/26)
ISBN-10: 4122045711
ISBN-13: 978-4122045712
発売日: 2005/8/26

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posted by ピアノ at 22:41| Comment(0) | その他、引用書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

気ままなお弁当箱

太田治子さんが35歳のときに、お母様の太田静子
さんが、空の上にいかれた。治子さんは39歳の
春に、ご結婚されて、娘さんも産まれた。その頃
のエッセイ。静子さんの情報は比較的少ないが、
空の上の静子さんに「私は、しっかり暮らしていますよ。」
と話しかけているような、落ち着いた文章が印象的。

文庫: 327ページ
出版社: 中央公論社 (1993/02)
ISBN-10: 4122019729
ISBN-13: 978-4122019720
発売日: 1993/02

気ままなお弁当箱

posted by ピアノ at 22:31| Comment(0) | その他、引用書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月05日

写真に見る、小山初代さん

小山初代さんの写真を、どこかで見たことが
あったのだけれど、どこで見たのかを思い出せ
なかった。ネットで調べても、まったく見つから
ないので、所蔵する本を探してみた。

少し探したら、長篠康一郎さんの著作である
「太宰治文学アルバム」の女性編にありました。

小山初代さんの写真

この写真は亡くなった年の初め、32歳の時に撮影された
ものらしい。

Wikipediaには「軍属の世話係をしているような男の愛人
になり、荒んだ生活を送っていた。」などと書かれているが、
写真を見る限り、そのような風には思えない。

太宰との心中未遂があったりして、暗い人のように
思い込んでしまいますが、この方と、田部あつみ
さんは、どちらかと言うと明るい人のように思え
ます。もちろん、太田静子さんも、ホウキと踊る
ほどですから、暗い人とは思えませんね。

皆さんは、どのようにお感じになりましたか?。



「ホウキと踊る太田静子」も、ぜひご覧ください
http://oota-shizuko.seesaa.net/article/14542009.html



ラベル:小山 初代
posted by ピアノ at 16:23| Comment(0) | 太宰治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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